「あーあー、今日もいいてんきーぃー」
口から出るままに適当極まりない歌を口ずさみながら校庭へと躍りだした。
白くぎらついた太陽は純然たる夏の訪れだ。
視界の端々がまばゆさで白く霞むなか、湖に住まう大イカにちょっかいを
仕掛けていた2つの小さな太陽のような頭が見えた。
 
「「これは、婦人、誠に麗しう天気でございます候」」
 
なんていやに恭しくふざけて返す声を期待しながら、駆け出そうとすると、
それはまさしく日光のようなプラチナブロンドが目の端を掠めた。
 
「マルフォイ!」
遠い小さな頭に大声で呼びかけると、どうやら顔をしかめているようだ。
それはきっと太陽が私の後ろにあって眩しいからなのだろう、と、
前向きに推測することにして湖の畔へと向かうはずだった足は森の方へと駆けていった。
 
「午後は休み?珍しいね!外に出てるなんて」
「ふん、君みたいに野蛮に毎日外を駆けずり回ったりする訳がないだろう」
いつものごとく答えになり切れていない嫌みだ。ああ、息が苦しい。
 
「っあー、疲れたっ、まじ校庭って広いよねー、ふぅ」
「おや、運動不足かい?あれだけ毎日ポッター達と犬のように駆け回っておいて?」
「あは、犬だったら私よりパンジーの方が適役だって」
マルフォイの横に座っていたパンジーに笑いかけた。
当然だがむすっと顔を歪ませている。ああ、肺が痛い。
 
「あー・・デート?お邪魔しちゃった、かなー、?ははは、」
チラ、とマルフォイはパンジーに目配せをしたのを私は見逃すはずもなかった。
「いや、」一呼吸おいて、マルフォイは言った。
「別に」

そしてパンジーが勝ち誇ったかのように、こちらを
隠しきれないらしい緩んだ口元で見ているのも当然見逃すはずがなかった。
ああ、全身に血が流れる音が鮮明に頭の裏をたたく。
 
「またまた、」
ああ、音が頭を震わす。

「私に隠さなくたって」
ああ、ああ、頭が震えるあまり涙が出てきそう!
 
「…」
それはまるで助けを乞うように上を仰いだ。
 
「すっごくいい天気だよね今日!」
 
ぎらついた太陽はなおも私達を容赦なく照りつけてくる。
むしろこのまま焼けて消えてしまいたかった。
マルフォイのようなプラチナブロンドの光線に焼かれて、
一瞬で、音もなく。
 
「ああ、うんざりするような天気だ、暑苦しくてかなわないね」
私はパンジーがマルフォイに何か言おうとするのをわざと遮った。
「マルフォイ、」
暑さへの不快感や、私に対する不信感を隠しもしない顔で
マルフォイはこちらを見上げる。
木漏れ日のなかでやはりプラチナブロンドは美しく輝いていた。
 
 

「…今何ていったんだ?」
「私の母国語でね、大好きって意味だよ」
自分が想像する太陽のような笑顔を貼りつけてこたえた。
 



しにたい
(それもすぐそこの湖へ飛び込んで、ね!)



(090807)
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